「自分探し」をしているばかりで当て所無く,しかし,悶々と日々を過ごす若者を随分と揶揄する言葉が,ここ数年多かったのではないか。本当にやりたいことなんかより,目の前にあることをやりたいかどうかなんて贅沢なことを言ってないで全力でやり切ってから,ものを言え,とかね。
当たっているとは思う。経験することでしか得られないものは多い。しかし,このことはもう一つの側面を捨象している。「自分探しとは何ですか?」「あなたはなんとなく生きてはいませんか?」「あなたのやりたいことはなんですか?」,これらに正直に答えることを避けているのだ。グダグダ,言わねーでやれよ!と言うだろう。だが,あなたの目標は何ですか?あなたの人生のビジョンは何ですか?あなたが達成したい夢は何ですか?に,いま,あなたは答えられるか?
だれだって,「郵政民営化!」だの「政権交代!」だの,わかりやすい目標を言い切ってしまいたい。いや,だから,職場や親や世話になった人や先生なんかのいろんなまわりのしがらみとか,期待とかあるわけで,そうそう自分のことばかりいえないでしょう。はあ,そうですか。じゃないんだ。たいていの大人が,若者のモヤモヤにきちんと答えらないでいるから,いまの日本の体たらくがあるんじゃないのか。
じゅあ,自分探しとは何なのよ。どうやったら,よいのよ。答えは,自分という法人を経営することだ。だから,経営計画作成の手法を導入すると良い。経営計画づくりなら,ものの本は五万とある。行政だって会議所だって3セクだって手伝ってくれる。
この人生計画とは何だろう?に答えてくれるのが,「リカちゃん」の生みの親で玩具メーカー「タカラ」(現タカラトミー)創業者の佐藤安太さん。今春、山形大学大学院の博士課程を修了し,ものづくりや人づくりを学術的にまとめとのこと。
佐藤流の人材育成で大切なことは、人生計画を立てること。「経営計画を作る会社は多いが、人生計画を立てる人は少ない」。(1)倫理(2)家庭(3)知識(4)健康(5)美(6)遊び心(7)経済力――の七つの項目ごとに現状を分析し、目標や行動計画をつくる。「なんとなく生きている人たちに、自分探しをして欲しかった」とも。
もちろん,「自分探し」なんてしなくたってイイ。ただ,自分探しで煩悶している人は参考にして欲しいし,「自分探し」で悩んでいる人が廻りにいる人は,その頭の整理を手伝ってあげてほしいと思うのだ。そのことが,アクションにつながるし,言葉への信用が高まると思うからだ。