アフター311の地方分権議論


 全国の若き首長の中でも傑出した人物の一人,千葉市長・熊谷俊人氏が自身のブログで,5月4〜6日の日程での東北地方の被災地訪問しての思いを綴っている。応援に行った職員の激励と意見交換を向かうとのこと。その行動力に敬意を表したい。
 陸前高田市を訪問して,

現地の方々の「何もない」「丸ごと流された」という言葉のとおり、文字通り殆ど何も残されておらず、この状況からどのように復旧復興が進むのか、正直イメージができない状況です。


大船渡市・陸前高田市を訪問: 千葉市長:熊谷俊人の日記


と言葉を失ったという。
 だが,ここから,役場機能の有無が復旧を大きく左右していると指摘する。

被災各市を訪問して見えてくるのは被害状況の違いによる復旧状況の差です。
大船渡市のように市域の一部に被害が留まっている自治体は震災後約2ヶ月が経ち、復旧に向けて少しずつ動き出している様子が分かりますが、陸前高田市のように役場機能を失うなど市域の大部分が被害を受けた自治体はなかなか復旧が進んでいない状況です。

基礎自治体が役場機能を喪失した場合、業務が異なる県では支援に限界があることはもちろん、同じ基礎自治体が支援する場合でも単なる支援レベルでは役場機能を元に戻すことは困難です。
災害復旧の主体は都道府県ですが、市町村が機能して初めて都道府県の機能が成立することが今回明らかになったと思います。だからこそ市町村は基礎自治体と呼ばれているわけです。この基礎である自治体が機能しなければ都道府県も機能せず、都道府県が機能しなければ国も機能しない。だからこそ基礎自治体の機能回復は全ての復旧の大前提でなければなりません。

震災後、私は国会議員などに「被害が甚大な市は周辺自治体と臨時行政体を作らないと復旧復興は進まないのではないか」と提言してきましたが、現地の職員や支援している人たちからも同様の意見を伺いました。



大船渡市・陸前高田市を訪問: 千葉市長:熊谷俊人の日記

 被災直後の避難と救命の段階から,復旧に入ろうとする時に,「この基礎である自治体が機能しなければ都道府県も機能せず、都道府県が機能しなければ国も機能しない。だからこそ基礎自治体の機能回復は全ての復旧の大前提でなければなりません。」との指摘は,きわめて重要だし,16年前の阪神淡路大震災とは,根本的に異なる事態を指している。
 「想定外」の言葉が何かの免責を導くのではなく,ただの想像力の欠如を指すことが明らかになった今,防災プランニング上の議論ではなく,災害があった際に,そこから復旧するために,周辺の自治体がいかにして「水平補完」を行うかの自治の設計図が求められている。
 地域のほとんどが何も残されておらず,役所機能でさえ失いうることがある(!)中で,地域の自治をどう培うのか,アフター311の地方分権議論は,ここから始まるのだ,と思う。