もはや,歌舞伎の演目にすべき!マンガ「竹光侍」を全巻,読んだよ。


 参った。降参だ。
 ワクワクさせるだけ,ハラハラさせるだけ,スルーっと流れるだけ,重たいだけ,そんなマンガならゴマンとある。これは違う。ホンモノだ。私にとって,このマンガは,ここ数年来のベストの地位は揺らがない。それほどのマンガだ。凄い。
 読むきっかけは,手塚治虫文化賞マンガ大賞の受賞だ。


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 江戸の長屋に住み着いた浪人、瀬能宗一郎。子どもやチョウと戯れる変わり者だが、じつは凄腕(すごうで)の剣客。刀がもたらす魔を恐れて竹光を差しているが、出生の秘密によってある藩に付け狙われる。


手塚治虫文化賞:朝日新聞社インフォメーション


 この授賞の記事が紙面に載るまで,無知ながら,このマンガの存在を知らなかった。もちろん,松本大洋の名前くらいは知っていたし,「鉄コン筋クリート」や「ピンポン」の作者であることも知ってはいたが,「竹光侍」については知らなかった。
 この賞の受賞作の多くはハズレが無いこともあって気になり,試しに全8巻のうち,1,2巻を買ってみた。これが1週間前。読んだ。圧巻とは,まさにこのこと。ページをめくる最中にスゴい,スゴいよ,と声に出た。物語はいたって平易なのだ。起きる事件も時代劇によくあるものだ。しかし,ちりばめたエピソードを全て拾っていく,緩い線なのに,絵に隙がない。私は,マンガ芸術の一つのピークを見た思いがした。
 残りの6冊を,週末にオープンした大型書店で大人買いした。6巻だけが帯がついていなかったのを後から気づいたが,まあ,仕方ない。それを昨日,読み終えた。大団円だ。1,2巻を読んだだけの時には,それらの巻では静かに思えたストーリーが全体を俯瞰してみると,実はずいぶんと沸騰した湯から沸き立つ気泡のように,ざわついたものに感じられる。この大団円のために,ページをめくっていたのだ,と。
 5巻を読み終えたときに,あと3巻で終わってしまうのか,と残念に思う。それほど,寂しくなってしまうのだ。マンガとしてのピークは,7巻だ。全てが符合していく。あぁ,そうなのか。全てのピースが揃ったパズルが8巻で完成される。あんなに終わって欲しくない話しに,満足する。そんなラスト。
 本当によくできている。アニメ映画化か,とも思うが,むしろ,これをベースに歌舞伎上演をしてもらいたい。大立ち回り,人情,勧善懲悪,歌舞伎のヒットの要素がてんこ盛りだ。平成の名演目になること間違い無し!関係者の皆さん,期待してますよ。
 そうそう,表紙カバーの絵は,6巻が最も好きだ。これ,掛け軸にならないかな。ぜひとも,注文したいのだけどな。


竹光侍 7 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

竹光侍 7 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 5 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 6 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
竹光侍 8 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)