「日本人の知らない日本語3 祝! 卒業編」でサピア=ウォーフの仮説を思い出す。


 マンガ好きのウチダです。
 「日本人の知らない日本語」は,1,2巻を読んだまま,同じ著者の「日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典」を,気になって眺めただけになっていた。
 「日本人の知らない日本語3 祝! 卒業編」を読んだ。今回も,日本語を知らない日本人である自分を実感しましたよ。


 著者・蛇蔵とその友人デザイナーのアメリカ人ライアンさんとの会話が登場する。

ライアン:俺の話し方やっぱりヘン?
蛇蔵:一人称を「俺に」にしただけでは男性っぽくはならないよ 形容詞や語尾や発音にも違いがあるから
(略)
ライアン:も〜!!だいたい日本語は性別で言葉が違い過ぎ!!
蛇蔵:確かに日本語ほど性差のある言葉は世界でも珍しいといわれているけど


p.96 「日本人の知らない日本語3 祝! 卒業編」


日本人のガールフレンドが話す言葉で日本語を覚えたライアン。話し方が女っぽいと言われるという。著者は「今時の女性言葉なので「〜だわ」「〜かしら」を多用するわけだはない」というものの性差がある日本語。
 この言葉においても,男性,女性の区別が大きい我が国。

世界経済フォーラム(WEF)が発表した「世界男女格差報告」で、日本は対象の136カ国中105位。2006年の調査開始以来、最も低かった。
(略)
経済のうち、企業などの管理職に占める女性の比率は9%と106位。日本では「夫は外で働き、妻は家を守るべきだ」という意識が根強く、政府の調査でもその考えに賛成の人の割合は5割超。女性が仕事を続けにくい環境が影響した模様だ。
 政治でも、衆院議員に占める女性比率は8%で120位。昨年の衆院選女性候補が軒並み落選したことが響いた。


「男女平等」日本は105位、なんで? 過去最低に:朝日新聞デジタル


言語が我が国の文化の基底をなしている,と言えないか。


 また,海野凪子先生が教える「間違いやすい敬語」。凪子先生は,「『自分を低める』ことで相手への敬意を表す言い方が謙譲語です」(p.36)という。

 父の仕事の関係で今年1月まで米国で過ごした女性(21)。日本ではアパレル関係の仕事に就いた。仕事が終われば友だちとクラブやバーに行くし、恋人もいる。でも、本音を出せない自分に悩んできた。
 米国では仲良くなれば言葉遣いも気にしなかったが、日本では年上に敬語が当たり前。「米国帰り」と言うと、「調子乗ってるの?」という目で見られている気がした。そんな空気が息苦しかった。


彼女・友人をレンタル、心を満たす 食事やおしゃべり…:朝日新聞デジタル


今朝の新聞記事で,人間関係の上下がつきまとう日本とそれをあらわす日本語が頭をよぎる。
 「言語はその話者の世界観の形成に差異的に関与することを提唱する仮説」であるサピア=ウォーフの仮説。そして,その成り立ちからして人造語である現代・日本語。
 もう少し風通しよく,行きやすくするための言葉のあり方を,考えてもいい時期に来ていると思う。


日本人の知らない日本語3  祝! 卒業編

日本人の知らない日本語3 祝! 卒業編

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