「1945年8月6日に何が起きたのか」を若者批判に使うな


誤解無きよう全文引用する。

産経抄

 広島に投下された原爆を、山本夏彦は昭和27年の夏、「アサヒグラフ」特集号の写真で見た。後にコラムに書く。「原爆記念日を期して私はこの写真を千万枚億万枚複写して、世界中にばらまきたい」。

 ▼その遺志を実現したのは、日系3世の米国人だった。スティーブン・オカザキ監督のドキュメンタリー映画ヒロシマナガサキ』が6日、4000万以上の加入者を抱える米国の大手ケーブルテレビで放映される。

 ▼飛行機から白い物が落ちてくるのが見えた次の瞬間、熱風で吹き飛ばされた。見回すと、手がない人、足がとんでいる人がいる。コンロで黒こげになった魚のような死体もあった。母親かもしれないと手を触れるとパラパラと崩れて灰が舞い上がった。

 ▼ 生き残った人たちには、原爆症の恐怖、周囲の差別、肉親の自殺といった、さらなる地獄が待ちかまえていた。被爆調査の名の下に、モルモット代わりにされたこともある。14人の被爆者の証言が淡々と続く。心ある米国人なら、テレビの前で居ずまいを正さずにはいられないだろう。

 ▼ 「原爆は終戦をもたらし、何百万人もの日本人の命を救った」。先月、ロバート・ジョセフ核不拡散問題特使の発言が伝えられた。同じ弁明を繰り返し、道義的責任を逃れてきた米国が、今や同盟国となった日本を、根拠のない慰安婦問題で非難する決議を下院本会議で採択する。その傲慢(ごうまん)を恥じてくれたらもっといい。

 ▼いや「日本人はやっぱり変だ」と感じる人の方が多いのかもしれない。映画の冒頭、1945年8月6日に何が起きたのか、聞かれて「地震とか?」と答える渋谷の若者たちが映し出される。戦後の平和教育が日本人をいかに劣化させたか、映画はそこも見逃さない。

(2007/08/06 05:49)


【産経抄】|産経抄|論説|Sankei WEB


 映画は見ていない。その冒頭のシーンはわからないので私に言及する資格は無いのかもしれない。
 だが,こうした「渋谷の若者」を「戦後の平和教育」の象徴として,新聞紙面上で揶揄や嘲笑の対象とする姿勢は支持できない。
 編集子に尋ねよう。あなたの親や兄弟に,なにげない団らんの場面で「1945年8月6日に何が起きたのか」を質したところで,即答できるだろうか。日本人として当然,答えるべき回答があることは,私も同意する。だが,しかし,おもむろに,だしぬけに,不意をつかれて聞かれたときに,「地震とか?」と答えてしまうことは無いか。想像力が欠如しているのは,どちらだろう。
 こうやって若い世代を攻撃して,「日本人が劣化」したと言い放って何の意味があるのか,年がら年中,思い出せないとしても,年に一度は,日本人一人一人が,そして日本人として世界に発信するために,メディアがその役割りを果たすことではないか。
 こうした過去を引き合いに出して世代間の不信を広げるようなことは許されない。