年金やら高齢化を考える上で欠かせない定年制について整理しておく


 この定年制というのは,現状,日本独自のものらしい。

諸外国、特に欧米諸国では定年を廃止、または法律で禁止する動きとなっている。これは、雇用における年齢差別の廃止という目的のためである。ちなみに、入口となる求人募集についても、日本と異なり、年齢制限が(法規上は)禁止されている。


定年 - Wikipedia


現在,法的に定年とはどういうことになっているかと言うと,

改正高年齢者雇用安定法(下記については、2006年4月1日施行)によると、事業主は65歳までの安定した雇用を確保するために、下記のいずれかの措置を講じなくてはならない。


  * 定年の

   1. 65歳への引上げ
   2. 継続雇用制度の導入(労使協定により、継続雇用制度の対象となる基準を定めることができる)
   3. 廃止


※経過措置がある。

なお、それ以前は、65歳までの継続した雇用を促す努力義務規定であった。(2000年改正による)

基本的には(2)の継続雇用制度の導入で対応する場合が多く、(1)の定年年齢の65歳への引上げや、(3)の定年制度自体の廃止まで踏み込む企業は、一部の中小企業や零細企業を除き、非常に少ない。


定年 - Wikipedia


とされている。
 かつては,55歳定年制の時期があり,1960-70年代にかけてはこれの60歳定年化にむけて国の支援策が施され行政指導も行われてきたが,やがて規制化される。

1986年に制定された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」で60歳定年が努力義務化され、その普及状況の実態を踏まえ、最終的には、1994年に60歳未満の定年年齢を無効とする現制度が確立した(1998年(平成10年)4月施行)。

 こうした政策的な取組や労使の積極的な取組により、60歳定年の普及率は1980、1990年代を通じて着実に上昇してきた。大規模企業で先行していたが、30〜99人規模企業でも普及が進み、ほぼ定着したといえる


平成12年版 労働経済の分析


こうした動きは,国が一方的に進めたのではなく,1981年に日本弁護士連合会は次のように決議している。

国、地方公共団体及び企業は、高年齢者にその自由な意思と能力に応じた就労の機会が提供されるよう、55歳定年制を廃止し、定年を合理的年齢(最低限60 歳)まで延長し、かつ高年齢者雇用を実現すべきであり、そのために年功賃金体系の改訂、各種奨励金等誘導策の充実、拡張、職業再訓練、適合職種・技術の開発等の対策を、積極的かつ速やかに講ずるべきである。


日弁連 - 高齢者の雇用保障に関する決議


この決議において,55歳定年制については,

わが国における55歳定年制は、明治中ば頃に長年の勤務者に恩恵的に休息を与えるという理由で設けられたのが始まりで、当初は老後の生活を保障するに足りる充分な退職金に裏打ちされていたといわれている。その後、55歳定年制は大正末期から昭和初期にかけて民間企業に定着したが、その目的は、次第に変質した。すなわち、中高年労働者の労働能力、意思とは無関係に、コストの低い若年労働者に切り替えるという企業側の一方的な都合により、中高年労働者を自動的に解雇し労働関係から排除する手段として機能するようになり、今日に至っている。


日弁連 - 高齢者の雇用保障に関する決議


と定年制の定着と経緯について述べている。ここで言われた「企業側の一方的な都合」は,いまの若年者には全く実感が伴わないだろう。
 以上の経過を押さえつつも,定年者の意向は,と言えば,

電通が2006年に行った調査では、男性の77%が定年後も組織で働くことを望み(75%は定年前に働いていた企業を希望)、働くことを希望した者のうち、フルタイム希望者が47%、パート・アルバイト希望者が40%となっている。


定年 - Wikipedia


であることを考えると,実はいま問題なのは年金や高齢化ではなく,定年制や賃金体系,役職等を含む職場慣行の問題ではないのか,と考えさせられるのだ。いかがだろうか。