イモなストーリー

 2006年、中藪さんは男爵の種イモを作っていた10ヘクタールの畑のうち6ヘクタールで、「十勝こがね」などを植えてみた。どれも自分が「うまい」と思った品種だが、東京に送ったら評価は散々だった。1箱(10キロ)が500〜600円。経費も賄えない。男爵なら1300円はいく。市場関係者には「知られていないから」と言われた。


http://digital.asahi.com/articles/DA3S11991958.html


「知られていないから」。そんな馬鹿な話があるだろうか。商品名の記号を売っているのか。デザイナーの名前やロゴをありがっているのと,一緒だろう。

 翌年、東京であったアグリフードEXPOで、様々な品種をそろえた中藪さんのジャガイモに関心を示すバイヤーが現れた。愛知県東部で5店舗を展開するスーパー「サンヨネ」だ。最初は数十ケースだった取引が、3回目からJR貨物のコンテナで出荷するようになった。
(略)
 代表取締役で営業本部長を兼務する三浦和雄さん(59)は「野菜にしろ果物にしろ品種はどんどん変わっている。ジャガイモだけがなぜ変わらないのか。おいしい品種がたくさんあるのに」と話す。去年まで3年間ほど男爵を仕入れなかったが、苦情や要望はなかったという。「あっけにとられたほどです」


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いやいや,あっけにとられたのは,こっちです。消費者は,旨くてリーズナブルなイモが食べたいだけだ。男爵を超えるもの,代わるものが出て来れば,それでよいのだ。そのことを限られた時間とスペースで,消費者に伝えることこと小売の現場の醍醐味だろうに。

 来年から、札幌の生協に出荷する。まとまった量を北海道内に出すのは初めてだという。


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アゴが外れるとは,まさにこのことだ。産地の地元民がイモの品種の豊かさ,個性をわからずにいる。そんなことで「農業王国」を名乗る大地があるとは情けない。
 基礎的な食品・イモだって,イノベートしているだ,という話だ。