読書感想文「「うちの子は字が書けないかも」と思ったら」千葉 リョウコ,宇野 彰 (著)

 成人になってしまった子を持つ,あるいは子育てを終えた方々には,悔恨の念が湧き上がってしまうのではないだろうか。と同時に,子どもとここまで向き合えなかった,宇野先生のような存在と知り合うことができなかった。何より,子どもの様子に対して,自分自身が「困っている,心配している」と助けを求めようとしなかったことに,言い知れぬ悔しさを噛み締めるのではないだろうか。
 著者の長男も長女も発達障害である。それも違うタイプの。本の中では絶望は一コマであったり,1ページだ。だが,リアルの著者が置かれた,暗く深い闇に包まれた時間の長さを想像する。そして,そのことを「どうしようも無いこと」と受け止めてしまうのではなく,どう彼らの将来を切り開くために,彼らと七転八倒し,彼らなりのゴール設定と解決策を手繰り寄せたのだ。
 誰にでもできることでは無い。リソースが身近にあった羨ましい事例なのかもしれない。しかし,誰しもが知っていて損は無い。こうした障害を抱えて生きる人が大勢いて,社会の一員であるのだ。


「うちの子は字が書けないかも」と思ったら

「うちの子は字が書けないかも」と思ったら

  • 作者:彰, 宇野
  • 発売日: 2020/03/03
  • メディア: 単行本