読書感想文「世間とズレちゃうのはしょうがない」養老 孟司 (著), 伊集院 光 (著)

 感覚派の養老先生と理論派の伊集院の対談である。
 二人に共通するのは,「嫌なことはしない」である。ただ,実家が太いこともあって,養老先生は好きな方を選び,嘘くさいことに疑問を呈してきた。多くの弟子を残し,本質を突く変わらぬ言動は重宝されることとなった。
 一方,落語の世界からスタートし,話芸を舞台からラジオやテレビの世界へと場を移し,地位を築いた伊集院光。「この芸を極める」,「大看板になる」,「冠番組を持つ」という競争の大渋滞を避け,子どもの頃から自分が通れる道を探してきたことを続け,いまのポジションについた。
 いま,養老先生や伊集院に憧れる人も多いではないか。蕩蕩とした佇まいや,何かの渦中にいずに世間を眺めているさまに,である。あえて言っておこう。彼らは意識して,そちらに行ったのではない。もともと,そういう人だったのだ。いま,憧れる人が多い分,彼らの地位への道は渋滞し,競争が激しくなっているぞ。