読書感想文「できる社員は「やり過ごす」」高橋 伸夫 (著)

 本当は正しい高橋伸夫である。歴史と伝統に裏打ちされた年功序列で運営される日本型経営が正しかったのだ。構造改革リストラクチャリング、業績主義、成果主義…この30年間導入されて、上手くいったのは何社あるんだ?日本経済はどうなった?肝心な成長はどうなった?年功序列には、能力主義的な要素も含まれ、その年齢と地位に伴う負担と役割がある。エスカレーターに乗っているとしても、その乗り心地は上にあがるに従い重くなるのだ。
 そして、そこに組織があることが重要なのだ。管理だのマネジメントだのは、後付けの理屈だ。そんなものより大事なことがある。組織をただただ成立・存続させるということだ。「組織がある」ことに意味があり、だからこそリーダーが夢を語り、チャレンジする姿勢が経営の本質なのだ。
 この夢やチャレンジとは、高橋が言う未来傾斜だ。高橋は日本人が年寄りになっても金を貯めようとするのは「未来を残す」ことが行動原理になっているからだ。行動の基準を現在に置いているのではなく、未来に置いているからだ。米が年貢であったからなのだろう。
 なぜ、ヤクザがシャバの世間から排除されるのか。刹那主義で未來に関心が向かないからだ。乱暴で厄介だからでは無い。今は我慢しても未来を残すことに意味を見出す社会に相入れられることがないからだ。
 「やり過ごす」したり「うるかす」のは、ここぞというタイミングをはかり、組織の中での按配を勘案しているのだ。すべては組織を未来にのこすために。