読書感想文「どんがら トヨタエンジニアの反骨」清武 英利 (著)

 組織と個である。
 なぜ、組織の中での個性が問題になるのか。その前に組織の中には、なぜか変な人がいる。運が良ければ、頭角を現すし、燻ったまま引退することもある。語り出すと止まらない変な人がいて、その光り輝く美点が組織の中で目に止まれば、その変な人に職責を与えられることになる。変な人本人にだって、自分は少なからず変だ、という自覚はある。変であろうとしているわけじゃない。やむ止まれず、ただ、自分であろうとすると変なのだ。
 組織は個性を必要とする。エネルギーだからだ。パッションと言ってもいい。これが無ければ、組織は停滞し進歩も発展もない。しかし、組織の中にあっては、個性は疎まれる。面倒であり、厄介なのだ。つつがなく過ごして欲しいのだ。明日は今日の延長であって欲しいのだ、まともの人にとっては。予測可能であって欲しいのだ。だから、突拍子もないことは言わないで欲しいし、おかしなこだわりやワクワクすること、エモいことに価値など置かれると困るのだ。
 組織は組織であり続けようとする。そのために内部の論理が重視される。だが、そのままでは
縮小均衡し、組織であることを保つことができなくなる。
 ザ・エクセレント・カンパニーであるトヨタですら、組織と個のあり方について、もがいている。変な人の引退がそのことを教えてくれている。実は、定年がこの本の補助線であり、現役生活とは案外、短い。