悪口に対して開き直れ,と村上春樹は言う。


 私は素直じゃないので,褒められるようなことがあると,とても困惑するし,むしろ俺じゃないだろ,とへこむ。

 かなりの確信を持って思うんだけど,世の中で何がいちばん人を深く損なうかというと,それは見当違いな褒め方をそれることだ。そういう褒め方をされて駄目になっていった人をたくさん見てきた。人間って他人に褒められると,それにこたえようとして無理をするものだから,そこで本来の自分を見失ってしまうケースが少なくない。


p.189 けんかをしない 「村上ラヂオ」村上春樹


村上春樹は,悪口を言われても,そうそうそんな人間ですよ,と開き直ってしまうと気楽で,その割にはよくやってるじゃん,と自信も湧いてくるでしょ,と言っている。だから,妙に褒められることを真に受けちゃいけませんぜ,とも言っているわけだ。
 いや,まあ,悪口言われりゃ,がぜん,怒りのパワーで燃え上がっちゃいますけどね,フツー。


村上ラヂオ (新潮文庫)

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