読書感想文「「読む」って、どんなこと?」高橋 源一郎 (著)

 閑話休題である。読む,という当たり前の行為を,一度,止まって考えようとという意図である。一時停止の標識を出されたようなものだ。
 読む,というからには,対象となるテキストがある。テキストは他者が書いたものだから,その他者が書き記す意味や意図,ねらいを,自分で咀嚼して自分のなかで理解して,理解した結果を自分自身で表出させる行動,説明,要約ができるようになることだ。
 果たして,「読む」とは,そういうことですか?と,高橋源一郎は,投げかける。
 例えば,詩の世界だったり(高橋源一郎は,ホント,詩が好きなのだが,詩だけで番組をやらせてあげられないものだろうか)。禁忌に関わる話だったり,生死に関わる話だったり。これらを読むという対象の幅広さと,読んでしまうことで言葉を失ってしまったり,魂を揺さぶられたり,激しく慟哭したりしてしまうことで,「書いた人の気持ちになりましょう」なんて,とても,できないことだってある。
 さまざまなものごとを「読む」という人類が続けて来た行為が,どれほどの営みを作り上げてきたか,そんなことも思う一冊である。