読書感想文「パンデミックの文明論」ヤマザキ マリ (著), 中野 信子 (著)

 コロナ禍の混沌の中で,何がどう語られたかの記録の一つになるであろう対談。
 この文明社会のもとでは,パンデミックとはあくまでイメージトレーニング,想定論として万が一,起きたらどうなるかをシミュレーションしてみるのであって,世間一般には実際には起こらない対象ではなかったか。コロナによる日本社会のピント外れ感とは,ヤマザキマリ中野信子が,古代ローマ脳科学から照射する日本文明の所在なさげ感である。
 日本社会の中で居辛さを感じている異邦人な彼女たちにとっては,自由主義・民主制の国家の一員であるはずのニッポンがコロナ禍で世界から奇異に映っていることを心配している。議事録もデータも明らかにされず,指導者のメッセージも届かない,と。
 実力のある者が登用されずにいる社会を憂い,男女差別も重く,世間の空気を読まねばならず,個性は当然,殺さねばならない。これだけ炙り出された問題に,彼女らがルネサンスを夢みるのも無理もない。
 やがて,振り返りの対談があることを期待しておこう。