読書感想文「孤独は社会問題 孤独対策先進国イギリスの取り組み」多賀 幹子 (著)

 当世英国孤独対策事情である。何せ世界初の孤独担当相の置いた国なのだ。本が書かれてもおかしくない。ときの首相は,オシャレ番長,テリーザ・メイ社会運動家である議員の気の毒な死亡事件からの世間の動きを受けての産物だったとは言え,社会問題が統治機構に変化をもたらした形となった。
 「孤独だ。寂しい」と感じた時(そう言語化できるか?の問いは横に置いておく),その当事者がそれを一人で解決できるか?これが孤独問題の最大の問いである。ソロ活動をする。シングル・ライフを楽しむ。おひとり様時間を有意義に過ごす。これらは,一人で勝手にできるのだ。
 非孤独を選択した瞬間,それは一人ではできないのだ。この孤独問題の不可逆性こそ問題に正面から向き合うためのスタートラインである。そこに立ちさえすれば,「社会問題」であるからこそ,因習まみれのコミュニティや全て死に別れて失われてしまう血縁ではなく,ソーシャルな問題として,リアルやネットでもつながりを求めることへのサポートが必要なのだ,との理解になるだろう。
 世界は動いている。本邦はどうか。