「子育てにケアマネジャーを」の主張に賛成する


 溜まった雑誌の処分を,鋭意実施中で,思い入れのない雑誌を必要なページだけをバラバラにしていく行為は,背徳的であるがバラした瞬間,とても気持ちがイイ。
 相変わらず,書評欄で目が停まる。

「例えば介護保険のケアマネジャーのように担当者をつけて,子どもがある年齢に達するまでフォローアップするくらい社会として踏み込んだ仕組みが必要なのではないか」


p.131 著者に訊く!「モンスターマザー 世界は『わたし』でまわっている」石川結貴
「ガバナンス」2008年2月号


ナイスアイディアだと思う。子育ての孤独化が言われて久しい。自分のわずかな経験と知識が頼りなく,情報の渦に吸い込まれたり,怪しげな勧誘に引っかかったり,と不安や悩みに応えてくれる相手がいない。
 もちろん,母親が正社員として雇用されていれば不安の後ろ盾になるし,社会的な経験が豊富であれば見えていることも多いだろう。だが,出産を機に勤めをやめた今の若い母親たちがいる世界は,昭和以前ではない。「カワイイ」が価値のデフォルトになった時代なのだ。そこに旧来の家庭観のもと,家庭の中で介護が完結しないのと同様に,家庭の中で育児も完結しない時代なのだ。
 だからこそ,この石川氏の発言に目が停まった。
 私は,さらにアイディアを付け加えておきたい。現在,40歳以上からなっている介護保険の保険料徴収を20歳以下にも拡げ,名称を「育児・介護保険」とするのだ。幼稚園/保育園はもちろん,「育児施設」としてこの社会保険の適用施設となるし,主に年齢(と発達)によって,育児等級により受けられるサービスを選択するとよい。フル・サービスを受けてもいいし,デイ・サポートでもいいし,ヘルパーさんに頼ってもいい。
 そうしたサービスの選択のサポート役として,石川氏のケアマネジャーが重要な役割となるだろう。

「(略)今,家庭は他人からはうかがい知ることのできない密室になっている。そこで何が起きているのか,きちんと見ていく必要があるのではないか」


p.131 著者に訊く!「モンスターマザー 世界は『わたし』でまわっている」石川結貴
「ガバナンス」2008年2月号


 そう,この密室化とは,最近の連続変死の「家族乗っ取り」や,DV,ネグレクトなど,家族内の異常事態に隣人が全く機能できていないことを引き起こしている。そうした他人が踏み込まないプライバシーが保全された家庭の気持ちの良さなどと言っている間に,家庭がゲーテッドあるいはクローズドな恐ろしい場所に変貌していることにもなる。
 家庭を賛美し,美しい愛のある社会の最小単位を讃えるのは素晴らしいことだ。だが,そこに変調を来し始めた時,何らブレーキをかけるような仕組みを失っているのだとしたら,社会全体として,欠陥を抱えたままだと言えよう。
 「老人を抱えた私たちは救われても,子どものいるお前たちのことなぞ知らん」と社会が宣言しているようじゃないか。


モンスターマザー 世界は「わたし」でまわっている

モンスターマザー 世界は「わたし」でまわっている