読書感想文「どうする財源ーー貨幣論で読み解く税と財政の仕組み」中野 剛志 (著)

 全ての経済学部の学生は必読だ。読後のレポートを書かない者は留年だ。貨幣とは、なぜ貨幣としての機能と役割を持っているのか?がテーマだ。もう一つ言っておこう。全経済学部の教授陣は国際的な学会で通説となっているこの本の論説へ有効な反論を書けないようであれば、学部内でのテキストとすべきだ。反論の相手は中野剛志じゃないぞ。ステイグリッツやクルーグマンにイエレンだ、まぁせいぜい、がんばれ。それと全国紙、経済紙の主筆、デスクも、夏休みの宿題だ。最低、署名記事で財源論について反論しような。
 担保機能としての土地需要が高くなり、有効需要よりも投機の対象となり地上げが横行したことに対し「総量規制」によって信用縮小させたことがデフレの玄関口だったし、本来、適正な土地管理とは、より詳細な私権制限のある都市計画の導入で管理すべきだったのだ(計画なきズルズルな土地政策は日本だけだ)。地価の上昇を土地政策でなく、金融政策で押さえ込もうとしたのが短慮だった。財政支出を拡大させ、需要を増大すべきだった。やれやれ、デフレ30年。そんな国は世界史に載るぞ。
 社会の分断を言い募る輩が覚えておくべきは、信用縮小がもたらす社会の再生産機能の低下だ。つまり、デフレこそ社会不安の元凶であり、でもそれは人為的に対処可能なものだということだ。決して、台風や地震ゴジラの類いではないのだ。間違った政策の結果なのだ。
 中野剛志には、次の著作で河本敏夫について書いてもらいたい。経済企画庁長官時代ばかりでなく、常にデフレを警戒した政治家だった。