読書感想文「こちらあみ子」今村 夏子 (著)

 テーマは空気だ。世間の空気そのものが主役なのだ。
 そもそも周りに「わかってもらえる」とは何なのだろうか。こちらから見える世界とそこから働きかける自分がいるとき,はたらきかけた相手からの反応そのものを、こちらが期待していなかったとしたらどうなるのか。思いがただただ溢れているのだから発意しなくてはならないからそうしているのであって、何も周りに期待せず、せいぜい、自分自身が思う通りに発せているかどうかを気にしているだけならば、「周り」はあっても無いに等しい。
 そんな自分、自分、自分に埋まっているなら、周りや周囲の空気の方が孤立する。そう、孤立させられているのだから、防御するため、その周りの方が、自分を攻撃する。怖いのだから、排除する。読んでもらえない周囲の側の空気が浮き上がる。
 実際の強さ弱さではない。「傷ついた」「浮いた」「怖い」と感じた側が弱者のポジションを取りに行く。「わけのわからなさ」がそこにあったからといって、黙って共存できるか、という問いでもある。