読書感想文「メメンとモリ」ヨシタケシンスケ (著)

 この世は、生きている者のものである。
 なので、うっすら感じている死んでしまうことやいなくなってしまうことは、普段は考えない。とは言え、当たり前に明日が来るわけではない。大小の違いはあれ、アクシデントはあるし、うっかりとしたミスもあるので、思わず、いなくなる側にすっぽり入ることもある。
 二人の子どもが対話する。ズルいのだ。ヨシタケシンスケなのだ。何気に子どもがする表情、仕草、ポーズで、ついそこに子どもがいるように感じるから、小難しいことを深掘りしていることが無邪気にみえてしまう。我々はそこに騙される。語るのはメメントモリだ。死を感じることとは、を語るのだ。
 3つの話しに全てオチがつく。なので救いはある。そうしたことで、問いかける重さにもかかわらず、つい書棚から手に取ってしまわせる一冊になることだろう。もちろんタイミングを選ぶだろうが、プレゼントの好適品だ。
 それにしてもだ。どうして、長新太といい、五味太郎といい、ヨシタケシンスケといい、絵本作家は、こんなにも哲学的なのだろう。こっちが普段、ものを考え無さすぎなのかもしれないが。