読書感想文「成瀬は天下を取りにいく」宮島 未奈 (著)

 頭のいい子たちのある種の物語だ。なかでも、私は島崎さんのファンである。
 天才・成瀬の空気を読まないきっぷの良さに大抵の人はヤられるのだが、成瀬ウォッチャー・島崎さんの神経の太さも大概だ。常識人である島崎さんが一方的に成瀬に振り回されるわけではなく、島崎さんには島崎さんの選択があるし、何なら成瀬に意見も言える。しかし、成瀬というジャンルにおける成瀬指数100%の成瀬あかりの最大の理解者であり、その面白さをウケているのが島崎さんなのだ。
 とは言うものの島崎さんは成瀬のプロデューサーではない。成瀬は勝手に生来の成瀬であって、天然の成瀬だ。言うことを聞かないし、次の動作も読めないので、ほぼほぼ野生の生き物だ。そんな成瀬と絶妙な距離感で見守る島崎さんがちょっと羨ましい反面、強烈な成瀬光線を浴びながら、よくもまぁ、島崎さんが正常さを保っていられるわけだから、島崎さんも大したものなのだ。
 何でも試してみたい成瀬の危なかっしさは、どんな大学生活、社会人生活を送らせるのだろうか。ぜひとも、島崎さん目線で知りたいものだ。