財務省主計官に地方分権について聞いてみた


 先週,縁あって地元私大の公開講座財務省主計官の講演を聞くことができた。なかなか無い機会であり,なんとか出向いたが,検索してみると,財務省主計官の講演はあちこちで行われているようだ。大学生の,しかも財政の初学者を対象とした内容のため,「財政」とは?や日本の財政の状況,歳入・歳出の内訳についての説明が主なものとなった。
 講演終了後,折角のチャンスなので「地方分権」について聞いてみた。


私: 今後の財政健全化を図る上で,これまでの歳出の見直しの手法は限界に近づいてきたとのことだが,社会保障費と公共事業の縦割りの関係を地域の現場から指摘したい。地域では新たに生活保護を受けることとなった世帯の要因の一つに,引っ越した先でアパートに入ることとなり家賃がかかってしまうため,少ない国民年金では暮らすことができず保護世帯になるというケースが高齢者を中心にある。むしろ,これは地域における住宅政策の問題であり,低廉な公共住宅が提供できてさえいれば保護世帯にならずに済んだということである。
 つまり,地方分権を進め,地域が地域の課題に地域独自の取組みができるようしていくことが財政面からも重要なことではないか?


主計官: おおむね,そのとおりだと思う。国の歳出をご覧なっておわかりのとおり,国が直接実施するため支出するのは,防衛費,経済協力,エネルギーなどごく一部であり,地方分権を進めることが重要だと思う。また,国の支出は,各省の縦割りだけではなく,省内の局による縦割りもあり,その弊害も大きい。各局毎に政策のパッケージが幕の内弁当のお仕着せとなっており,こっちのおかずとそっちのおかずを選びたいだけなのに,両方にみそ汁がついてきて余計になる。イギリスではサービスの受け手がサービスを選べる仕組みとなっており,そうした柔軟性の発揮には,地方分権が望ましいと言える。
 ただし,これまで地方,とりわけ議会は市民に負担を求めるようなことをせずに来たため,分権したことによって地方の赤字が積み重なって,かえって国の負担が増えるようなことになってはいけない。この点は課題である。


 なるほど。地方分権の意義やねらいは十分理解されているのだ。ありがたい。しかし,問題は,地方における歳出のチェックと歳入の確保について議会は十分に機能するのか疑問だ,と思われているのだ。これは国全体として,そう思われているととっていいのだろう。それほどに自立も自律もしていない地方は,理屈では地方分権があるべき姿だと思っても信用されうる存在ではないのだろう。
 何かに甘えるわけでもなく「大人の」地域経営があって,してみせることで,国と次なる分権型社会の議論に進めるのではないだろうか。