浅田次郎も言う,書き続けていないとつぶれる。


 稽古やトレーニングを欠かすと上手くならないどころか,つぶれてしまうと浅田次郎が語っている。インタビュー記事で若手作家へのアドバイスとして。

 寡作はだめ,数多く書かないと上手くならないよ,と言い続けている。(略)
 ぼくら作家は,いいものを書き続けていないとつぶれてしまう。けっこうなハイペースで書いているが,これでいいなんて思ったことはない。マラソンと同じで,いつ横っ腹がいたくなるか,足がつって走れなくなるか。ゴールまで走り続けられるだろうか,落伍する怖さをいつでも感じている。
 デビューした頃から自らに課しているのは,前作よりいいものを書くという戒めです。次はもっと大穴を当てたいと思っています。


2011年9月17日(日) 朝日新聞b3 フロントランナー 浅田次郎さん


 では,いいものを書くためにどうしているか。頭のなかで精緻に描き上げてから作業すること,そして,規則正しく自己を律すること。

 創作ノートなんて作らない。イメージをふくらませ,没頭する。無為に考える時間が大切で,書き出すまでが勝負ともいえる。
 毎日,朝5時に起き正午まで原稿を書いて,午後は読書ざんまいで過ごす。古い小説を読みたくてたまらないんです。書くための血肉になっているのがよくわかる。


2011年9月17日(日) 朝日新聞b3 フロントランナー 浅田次郎さん


 作品との向き合い方は,常にリフレッシュすることを心がける。

 小説は自己模倣したらおしまいなので,ある作品で成功したパターンは次には使えない。表現の方法,技術的問題などで新味を出す。


2011年9月17日(日) 朝日新聞b3 フロントランナー 浅田次郎さん


 仕事論や作品論をはなれて,家族と社会について,何を口伝し,何を書き残すのかと,言うこと。

 父親は敗戦時に20歳。父が戦争当時何をしていたか,ほとんど知らない。しゃべらなかったからです。過酷な体験をした父親ほど,子には伝えないのでしょう。その選択は正しかったと思う。


2011年9月17日(日) 朝日新聞b3 フロントランナー 浅田次郎さん


 最後は,電子リーダーについて。こういう前向きさはうれしい。iPad向けに,14作品も出しているのだから当然か。

 いい小説を書くのは,僕の仕事だが,読者にどう届けるかは出版社や新聞社の仕事。新メディアの出現は,出版文化を考えるいい機会というくらいに考えている。
 (略)多くの人に読まれるのなら本のかたちはどうなってもいい。


2011年9月17日(日) 朝日新聞b3 フロントランナー 浅田次郎さん


 以上,メモメモ。