読書感想文「見果てぬ日本: 司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦」片山 杜秀 (著)

 読書家がニヤリとする一冊だ。
 司馬遼太郎小津安二郎小松左京のそれぞれの作家論は山ほどある。3人分揃ったパッケージだ。イヒヒ。楽しい。全体の半分以上を占めるのが司馬遼だ。それも司馬遼太郎の小説ではなく、エッセイを読んでいる者は気づくのだ。片山も読んでいるな、と。どうにも、片山と読書会をやっている気分になる。読み手が司馬遼を読んでいるからこそ、ツボにハマる。しかも、片山は福永光司にも言及する。日本の歴史を考えるとき、神道を考えないわけにはいかない。その神道道教の関連から鳥越憲三郎とともに福永光司は必読になる。わかってるなー、片山!と膝を打つ。
 小松と小津は日本論のようであって、実は「昭和というフィルター」を相対化してその存在を知らしめる。この二人の目からの日本では無い。その時代に日本を見た二人の目玉についての考察なのだ。リアルタイムで小松と小津の活躍を知る世代は少なくなった。だからこそ、時代と視点を客観的に見られるようになった。
 この本は、メタ的に読書する楽しみを味わう時間となるはずだ。