読書感想文「六角精児の無理しない生き方」六角精児 (著)

 ちょっとメンドくさい人が、自身のメンドくささを自覚し受け入れた人生だ。
 なので、実はタイトルはちょっと違う。ずっと無理をしてきたのだ。ただ、無理を続けることができず、無理をすることにギブアップしたのだ。負けを認めて負けを受け入れたのだ。「無理できなくなった生き方」なのだ。
 情けない自分、ダメな自分、弱い自分を直視できるか。いくら趣味や自分だけの価値観を持っていたって、世間さまの物差しで比較されるし、自分だってその尺度で自分自身の程度を測ると、その計測結果は、みっともないし、情けなく、辛い。だからこそ、大抵の人は目をそらす。取り繕うし、自分に嘘をつく。
 ただ、六角精児の本質である難しさは変わらない。「商品としての六角精児」を自身がわかっているのであって、その商品が持つ価値を形成する製造工程における原料に「メンドくさい人」成分が入っていないと成り立たないことは、本人がよおく知っているのだ。画面の中で、六角精児が、はしゃがずに世の中を語るとき、チラチラと熱い語り口になるのを我々は知っている。
 私の夢は、場末の居酒屋で六角精児に酒を注ぐことだ。奢りますので連絡ください。