読書感想文「なぜジョブズは禅の生き方を選んだのか?」桑原 晃弥 (著), 藤原 東演 (著)

 日々の積み重ねで濁りや澱が溜まるように、生きていく中で理性が曇り、感情が毒され、そして感性や直感の瑞々しさが失われてしまう。
 常に本質を問い、鈍ってしまうことを嫌った男・ジョブズ。世界を変えられると真顔で思っていたのだから、世の中の複雑さを理解する一方、解決策のシンプルさが大切だとわかっていた。
 ジョブズの言葉に「お金で買いたいものなんて、すぐに尽きてしまう」と「つけ足すものが何もなくなった時ではなく、取り去るものが何もなくなった時、初めてそれが完成したことを実感する」がある。
 禅的なミニマルな生活が、かえって、ものの本質や美しさ、豊かさを生み出すというと反語めくが、「モノがある」ことと「コトがある」ことで、そのモノ・コトの主体であるはずの我々を蝕みだす。そうであれば、モノ・コトの無い状態にリセットできること、そしてモノ・コトの周りの間や空間に気を配ることが重要になる。
 禅に可能性を見出したジョブズと、ジョブズを理解する一つの切り口として禅である。