読書感想文「事務に踊る人々」阿部 公彦 (著)

 事務とは、手続きであり、プロトコルであり、フォーマットであり、プロセスであり、契約であり、説明責任であり、会計であり、ブロックチェーンである。要は、「正しさ」を求める一連の行為である。
 この一連の行為において我々は「正常」でなければならず、まどろんだり、モヤがかかっていたりしてはいけない。パッキリキッカリ明晰でなければならない。こうした事務的であること=官僚的であることとは、正しさがもたらす恩恵を受ける便益のためであって、普遍性のある行為だ。元来、求められてきたのだ。
 しかし、事務があることが当たり前な時代になって、事務は嫌われることになる。形式的であり、曖昧さが許されず、合目的的一辺倒なのだ。言わば、堅苦しいのだ、事務とは。人間はグウタラで出鱈目でいい加減でだらしなく、テケトーなのに。
 人間とは、人間味のある愛すべき存在である一方、仕事をする主体である。仕事の成果とは計量的である。報酬は貨幣だからだ。
 これまで、あくまで「処理」されるものでしかなかった事務そのものがテーマとなったことに、フフッと思ったりする人は案外、多いかもしれない。