「NPOのO(オーガニゼーション)に釈然としない」のだそうだ。

 書き出しは,こうだ。

 私は,頭のどこかだと思うが,NPOやボランティア活動を,どこか信用していないところがある,と端から,こういう書き出しでは,,以下を読みたくなくなる人もいるのではないかと,書き手としては気になるが,素直にいえば,そういうことである。


 「熱狂から醒めて−NPO・ボランティアというゆとり」
  田尾 雅夫(京都大学公共政策大学院教授)
  「出版ダイジェスト」2006年11月1日(二社連合特集版 農文協ミネルヴァ書房

 次の引用が難しい。中途半端に引用してしまっても著者のいう「私にとっての払拭しきれない気分と,躓き」が伝わらなくなるからだ。要は,NPOというものの組織(いや集団か)が思いで動いてしまうことと組織マネジメントについて,経営学の立場からどう見るかを語っている。そして,

 しかし今,当初の,狂騒に近い熱気も多少醒めだして,普通に議論できるようになったと感じるようなことも,再三である。大げさに騒ぐほどのこともない。活動をしたい人が集まってしたいことをすればよい。多少の熱意があればできる,それだけのことである。行き詰まれば店仕舞いをすればよいのである。それだけのことである。足元を見てしまえば,クラブ活動のようなものである。負けが込んだら解散すればよい。その好き勝手なところが真骨頂でなければならない。法人化で騒ぎだしたころから,それ以前ボランティア活動を知っている立場としては,何か反りが合わない気分にさせられていたが,ようやく私の皮膚感覚にしっくりあうようになったといえばよいのだろうか。最近は,普通の目線で見ることができるようになった。

 引用 同紙


最後は,こう結ばれる。

 役立たないものがあることが市民社会の健全さだと,私は思う。役に立たないNPOがいてもボランティア活動があってもよいのではないか。本人が嬉々として働いているのであれば,傍からガタガタいうべきではない。そのゆとりの気分がゆったり流れているところに,市民の活動がNPOやボランティア活動として活かされる,そして市民社会の成熟がある。逆をいえば,その証しがNPOでありボランティア活動である。

 引用 同紙


 素敵な結びだ。文章はこうありたい。いや,文は人なりか。
 この田尾先生が,NPOの組織マネジメントについて理論的にまとめた本が,



 安くはないが,手に取るべき一冊だろう。