ソアラは,5ナンバーだったんだよ


 「5ナンバー」って何よ,か。5ナンバー枠内のクルマのこと。
 この5ナンバーが効き目があったのは,1989年3月以前に「物品税」が18.5%の税率が適用された,手っ取り早い話しが車幅が1,700mmを超えない排気量2,000cc未満のクルマ。この枠を超える3ナンバーのクルマは,税率が23%だった。当時の倹約を是とする日本社会では,3ナンバー車は贅沢とされた。このため,高級車であっても5ナンバー車を基本として,フェンダーを膨らませただけの3ナンバー車が走っていた。全長が長いだけで,車幅が1,700mmに留まる日本車を,「バランスが悪い,カッコワルい」とくさしたのは徳大寺有恒だった。物品税が無くなって消費税が導入されたおかげで,高額の高級嗜好品への抵抗感が減り,いや,お買い得感が出て,消費が増えたことは否めない。そういう世相だった。
 1986年に登場したトヨタの最高級クーペの2代目ソアラは,「ハイソカー」と呼ばれた。ハイソサエティー・カーの意味だ。上流階級と勘違いさせてくれるクルマとして,1億総中流社会における差別化ツールであった。このソアラは,ハイテク満載で特に電子制御式エアサスペンションの世界初導入は話題となった。ただ,スペック大自慢のクルマであって,「走り屋」に受けたわけではなくナンパなクルマであった。
 このソアラも当然ながら,5ナンバーと3ナンバーがあった。世間的に5ナンバー枠におさめているクルマであることがよしとされていたからだ。若造が3ナンバーに乗ってはいけなかったし,社長はクラウンでも5ナンバーだった。2.5リッターや3リッターの3ナンバー・クラウンは特別だった。


 先日,出勤時に埃だらけの2代目ソアラと並走になった。若い人が運転していた。このクルマが出たときもあなたと同じくらいの人が競うように買っていたのだよ,と思った。そうだよ,5ナンバー車のソアラがあったときだよ,と。


 5ナンバーであることに,そして,5ナンバーを超えることに意味があった時代だ。世間は貧乏臭く,世の中はどこまでも成長する明るい未来をただ信じられる,思い出すとちょっと恥ずかしいそんな時代が。


 ちなみにトヨタソアラというクルマは,もうない。あるのは,レクサス・SC430