元日や元旦の習俗について,確たるものは知らない。世間のせわしなさにやれやれと思うし,早いところ,普段がやってくればいい,とさえ思う。それでも,つい「正月らしいことを」とは思うし,あいさつに出かけなきゃ,と考えてしまう。
実家や親戚との行き来を少し考えていた際,山口瞳の次の文章を思い出した。
私のところの元日の客は多いが,若い人が一家をなしたなと思ったときは,もうそろそろあなたは元日は自分の家で客を迎えなさいと忠告することにしている。
p.211 「礼儀作法入門」 山口瞳
こうした目上の存在を持ち得ていない(たんに無礼なだけなのだが)がために,あいかわらず,元日にちょろちょろして過ごしてしまったりする。山口瞳から見れば,どうにもこう「一家をなし」ていないままなのではないか,と思う。「俺の方は動かない」と,自主独立した存在であろうとすること,そうして過ごす元日であってこそ,「一家をな」すことなのではないか。そうやってこそ得られるものではないか。
自立なんてのは,案外,こんなことなのかもしれない。
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