新刊ベストセラーである。東野圭吾である。主人公・加賀恭一郎である。
話しが架橋に入った段になって,ページがぐんぐん進む頃,とたんに「ああ,現代を描写した小説だな」と感じ入る。コミュニケーションが不足しがちなため,互いの思いのやりようが無くなる。ちょっとした感情の機微がうつろうなか,肝心なことを伝えがたい日々が過ぎる。そうしたシーンがいくつも積み重なる。
また,現代の女性の生きにくさ,女性らしさと自己実現の狭間にゆれる登場人物が幾人も描かれる。それをワガママと評すか,愚かさと言おうか,大胆さと言おうか。主人公・加賀恭一郎の推理と行動力に魅かれるが,この物語は,そうした現代女性を描くことによって話しの重層さを上手く描き切ることに成功したと言ってよいだろう。
きれいに話しが進む一冊。これまで加賀恭一郎シリーズを手に取ったことのない方も存分に楽しめる。会話が中心なのでページをめくるスピードも加速するはずだ。家族についても考えさせられるこの本,どうぞ,お手に取ってみてほしい。
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/18
- メディア: 単行本
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