ウチダカズヒロのブログ

最近は読書感想文を書いてます。オススメ本を教えてください。読書感想文のご依頼あれば、読みます(たぶん)。kazgeo@gmail.com まで。

読書感想文「平等について、いま話したいこと」トマ・ピケティ (著), マイケル・サンデル (著), 岡本 麻左子 (翻訳), 吉田徹 (解説)

 サンデル先生は熱い。ほぼ「燃える男」だ。
 「市場に任せれば、意見の分かれる共通善の問題について議論したり判断したりせずにすむという見当違いの望みを抱き、それが市場の魅力の根源になっている」。そう、お前ら、思考停止し過ぎ、議論し判断すべきだったのに、自由貿易、グローバリズム、金融化、能力主義一辺倒だったろう。何してたんだよ、楽すんなよ、である。だから、ポビュリズムが蔓延ったんだ、だと。
 足りないのは、民主的熟議だ。手っ取り早く悩みや怒りをどうにかして「スッキリしたい」のだ。スカッとカタルシスを得たいのだ。文句を言い、悪口を言い、悪ふざけをし、嘲りを繰り返し、内輪でウケて盛り上がりたいのだ。どうする、熟議なんて遥か彼方だぞ。
 ビケティは繰り返す。「高等教育に投入するリソースの量的拡大がぜったいに必要」、「所得と富の両方に対して傾斜の大きな累進課税を復活させる」べきだと。なぜか。「あらゆる富は共同の産物であって個人の成果ではない」。本来、理屈としてそうなのだが、互いに依存しながら責任を分かち合っているという、共通性を感じられる場所や機会が欠如している、というのだ。
 国際金融資本が世界を跳梁跋扈し、やりたい放題になり、私企業が宇宙空間でも何でもアリにしつつあるいま、なぜ、トランプやル・ペンに票が集まったかと言えば、それは失業、とりわけ貿易競争に敗れた国内産業の失業が原因だった、と端的にいう。だから、本来、取り組むべきは、経済のグローバル化や経済システムの構造を変えることであり、関税だけを言っているように喧伝されるが、トランプは「対処」はしていることになる。非エリートが抱える不満、すなわち、承認や尊厳が「奪われ続けている」という不満を直視していない、ということだ。
 思考せよ。責任ある者ほど、思考せよ。市場に委ねてしまうような楽をするな。国家を語るのに、ゼニカネの話ばかりでなく、価値や共通善の議論を丁寧にすべきだ。放っておくと、不平等がますます蔓延る。警句の対談である。