2019-01-01から1年間の記事一覧

読書感想文「ヤマザキマリのリスボン日記 テルマエは一日にして成らず」 ヤマザキ マリ (著)

私と同年代のヤマザキマリが,テルマエロマエで地位を築く前のmixiやブログの記事(いや愚痴か)を綴った一冊。息子愛をこじらせた姑に手を焼きヘトヘトになる嫁・マリとは,大御所になる前のヤマザキマリその人であり,そんな心が縮れるヤマザキマリの独白…

読書感想文「わたしの台所」沢村 貞子 (著)

1996年に亡くなった明治生まれの女優・沢村貞子の著書。いま,樹木希林没後の出版ブームらしいが,出版社の諸君!沢村貞子の再編集・復刊フェアを早々に始めた方がいい。人生へのまなざしと文書のうまさはどうだ。女優の息遣いさえ聞こえてくる文章だ。たま…

読書感想文「サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃」ヴァイバー・クリガン=リード (著)

「ヒト自身も文明によって加速度的に変わりましたよ」。みんなが,まぁそうだよね,と思っていることを,人類史の年代区分に解剖学的な見地から証拠づけ「人新世」と名付けた新たな概念を提唱したことが賞賛されている本書。なので,初めから終わりまで,ソ…

読書感想文「今夜、笑いの数を数えましょう」いとう せいこう (著)

私の7つ年上のいとうせいこうが「笑い」を体系だてて,本人が納得したいがために対談をし続けた結果をまとめた一冊だ。80年代,90年代,00年代,ステージとテレビでお笑いが増加し,やがてお笑いがメインストリームになっていく中で,いとうは考える,「な…

読書感想文「一切なりゆき」樹木 希林 (著)

樹木希林という時代を成した人を惜しんで編まれた一冊である。インタビューを中心に,これだけの言葉を残した「この人とは一体?」と興味が尽きぬゆえ,こうした本も出てくるのだろう。では,何が樹木希林とほかの人を分けるのか?それは,自分自身と周囲の…

読書感想文「好日日記―季節のように生きる」森下 典子 (著)

アフター・フォーティ・イヤーズ。茶道を始めた女子大生は,その後,どうなったか?答えは,どうにも,ならなかった。いや,ルポライター・コラムニストとして,地位を築いた。亡父を見送り,老いた母や叔母と年中行事を過ごすようになった。そして,お茶を…

読書感想文「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」川上 和人 (著)

あー,面倒臭い。頭のいい人特有の話があちこちに飛び,自分の周りのネタを早口でぐいぐい押し込んでくる,そう,あなたも経験したことがあるだろう,あの喋りで全編,貫かれる。著者は,NHK「子ども科学電話相談」でお馴染み,我らがバード川上だ。テレビ出…

読書感想文「千利休 切腹と晩年の真実 (朝日新書)」中村 修也 (著)

困った本なのだ。いや,この本で困ったことになっているのだ。おそらく,中村先生の指摘は正しい。利休は切腹してない。利休は侘び茶を生んでない。利休は待庵を作っていない。おいおい!とツッコミが入るわね。でも,実は茶道界では,まぁそうだよね,と受…

読書感想文「志ん生一家、おしまいの噺」美濃部 美津子 (著)

またもや,志ん生である。でもしょうがない。大河ドラマが志ん生だからね。でも,この本,美濃部美津子一代記なのだ。志ん生長女の生い立ちと彼女の眼に映る志ん生一家の悲喜こもごもである。やはり,家族の眼から贔屓目に見ても志ん生はめちゃくちゃである…

読書感想文「上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門」上馬キリスト教会 (著)

あちら側とこちら側とのあいだを,「もう行き来できない」と諦めてしまう関係があると思う。強情だったり,強欲だったり,「まあ,おつきあいはごめんこうむります」という方との関係だ。自分たちから縁遠い宗教というのも案外そうで,信心が深過ぎる人とは…

読書感想文「Casa BRUTUS(カーサ ブルータス) 2019年 1月号 [茶の湯とデザイン。/石田ゆり子] 」

建築インテリア系雑誌のお茶特集。茶室や茶道具の基礎知識のページだったり,武者小路千家の千宗屋さんが,この類の特集に登場するのはお馴染みで,つい「またか!」と口をつく。なので,流し読みになってしまいそうだったが,途中から俄然,面白くなる。京…

読書感想文「日本史の探偵手帳」磯田 道史 (著)

磯田先生の雑誌寄稿を束ねた一冊である。連載や書き下ろしではないこともあるのか,筆致が抑えられ,ウケを狙いにいっていないところがいい。「戦前エリートはなぜ劣化したか」は,明治維新後のリーダー層を3期に分け,第1期の志士,第2期の慶応年間から明…

読書感想文「志ん生の食卓」美濃部 美津子 (著)

昭和のメシである。なので,大したものは出てこない。当たり前だ。当時はそんなものだったのだ。ヒト・モノ・カネが大移動することが当然になったのが,1985年だろうか。プラザ合意の年だ。円高になり,人が海外に出かけるようになり,モノはイトーヨーカ堂…

読書感想文「吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる」吉本ばなな (著)

同世代の周りの人たちよりも早く社会的な地位を得たが故に,人とのつながりとは?を考える機会が多くなってしまった吉本ばななが寄せられた悩みに答えるという形式で綴られた一冊。吉本ばななという特殊な環境だから,この回答なのだ!と切った捨てることも…

読書感想文「麒麟児」冲方 丁 (著)

勝海舟である。西郷隆盛,坂本龍馬,横井小楠,徳川慶喜ら「主役」に対するセットものとして取り扱われる海舟の内面が全編を覆う。あまりにも大きな存在の幕府を結局,能ある「人物」である海舟がしようが無く背負わされてしまう。しかも意を尽くす相手が大…

読書感想文「十代目 柳家小三治 (別冊太陽スペシャル)」

写真に写す人間国宝である。対談,そして弟子の言葉である。私にとって小三治師とは,花王名人劇場である。その頃は,タレントとしてテレビにもよく出ていて,バイクの話しもしていた。たいてい北海道へのツーリングだったように思う。どんな噺をしていたろ…

読書感想文「異教の隣人」釈徹宗、 細川貂々著

平成が終わる日本における必読書である。 これまで多くの新宗派や新興宗教を生みながらも,「日本」に包摂してきた我らが,他の宗教を並立させながら,この国を営んでいくために必要な視点を提供してくれる一冊だ。日本に,非日本人として生きることを望む人…